第27章 【それぞれのクリスマス】
おばさんの怒鳴り声は病室の扉を通りぬけ、廊下まで聞こえて来た。それを聞いた病院の人達が何事かと振り返り、クリスはなんだか少し恥ずかしい思いをした。
クリスが待合室で時間を潰していると、どっと疲れた顔をしたハリー達がやってきた。何があったのか聞くだけ野暮だろう。
「お茶でも飲みに行くか?」
「うん、そうしたい」
珍しくクリスが気を利かせると、4人はそれに従った。6階にある喫茶室へ行こうとクリスが立ち上がると、待合室の人ごみの中に、忘れもしないハゲタカの剥製の乗った派手な三角帽子が目に入った。
その隣には、少しでも目立たない様に歩く小太りの少年――ネビルの姿があった。
「ネ――」
声をかけようとして、クリスは思いとどまった。一瞬にしてネビル達が「誰の」お見舞いに来ているのか悟ったからだ。
咄嗟にハリーの方を見ると、同じことを思ったのか、ハリーもクリスを見ている。
とにかくこの場は上手く誤魔化そうと思った矢先に、ハーマイオニーがネビルに気づいてしまった。
「あら、あそこにいるのネビルじゃない?メリー・クリスマス!!ネビル!」
「おや?友達かね、ネビル」
ネビルのお婆さんが訊ねると、ネビルは答えにくそうに僅かに首を縦に振ったただけだった。ミセス・ロングボトムは人ごみをかき分けクリス達の元に来ると、ネビルとは正反対の堂々とした態度で握手を求めた。
「あなた方にお会い出来て光栄だわ。ネビルがいつもあなた方の事を自慢しているんですよ、勇気があって頭も良いと。それに引き換え、この子ときたたら……せめて入院している両親の10分の1でも才能があれば――」
「えーっ!!ネビルの両親って、ここに入院してるの!?」