第27章 【それぞれのクリスマス】
病院までの道のりは、マンダンガスが拝借した車で行くことになった。
一見普通の乗用車だが、中は魔法で広くしてあり、1台で何十人も乗れるようになっていた。
その上、クリスマスで道路がすごく空いている所為もあって、聖マンゴ病院までの道のりはとても楽ちんだった。
車をマンダンガスに頼むと、一行は時代遅れの古臭いマネキンに話しかけてからショーウィンドウをくぐり抜けた。
受付ロビーはいつもより明るく感じられた。と、言うのも壁や照明のあちこちにキラキラ輝く星が散りばめられており、それが白い床に反射して幻想的な雰囲気をかもし出していたからだ。こう言うのを見ると、何となく心がウキウキしてくる。
ウィーズリーおじさんの病室に入ると、おじさんは元気そうに「メリー・クリスマス」と挨拶した。だがその挨拶は怪我に対して元気すぎる様な気がした。途端に叔母さんの眼が光る。
「あなた、具合はどう?」
「ああ、すごく良いよ!もう少しで退院出来るんじゃないかと癒者も言っていた」
「……そう。ところで、いつ包帯を換えたの?私の記憶では、包帯を換えるのは明日のはずでしたけど?」
「あ、あぁ……これは、その……なんと言うか……そう!新しい癒学の貢献なんだ。研修癒のオーガスタスが、マグルの大学を出ていてね。そこで縫合と言うマグルの施術を学んだとか――」
段々雲行きが怪しくなってきたのを察したのか、ルーピン先生とムーディ先生は急に隣の狼人間のベッドに興味を持ちだし、カーテンの向こう側に消えた。
フレッドとジョージは「喉が渇いた」と言って、さり気無く病室を出て行った。残されたハリー、ロン、クリス、ハーマイオニー、ジニーの5人は、正直「逃げ遅れた」と思わざるを得なかった。
「まさかとは思いますが、そのマグルの縫合とかいう胡散臭い施術を、あなたの傷で試したとか言いませんよね?」
「いや、偏見だよモリ―。縫合は決して胡散臭くなんかない。むしろ――」
「言い訳は結構っ!!!」
遂におばさんの怒りが爆発した。これ以上この場にいるべきではないと判断したクリスは「バーニー先生に挨拶してこなきゃ」と尤もらしい言い訳を述べて足早に病室を出た。