第27章 【それぞれのクリスマス】
最後に見たのは、『ポートキー』でこの屋敷に戻って来た時だ。シリウスに出ていけと命令されて、廊下の奥へ姿を消してしまった。
それ以来クリーチャーを見た記憶はない。まさかとは思うが――。嫌な予感がみんなの頭をよぎり、一瞬だがその場の空気が凍る。
「き、きっと上の階のどこかに隠れているに違いない」
「でもクリスマス前にこの屋敷を大掃除した時も、一度もクリーチャーを見ていないよ?夏休みの時はしょっちゅう現れたのに」
「そう心配するな。そもそも屋敷しもべは命令がない限り屋敷を離れる事が出来ない。そういう契約になっている」
「その命令を、屋敷しもべ自身が間違って理解してたらどうなるの?つまり、シリウスが『出て行け!』って言ったのを『屋敷から出て行け!』って命じられたと曲解していたら?」
それは無い――とは完全には言い切れなかった。シリウスは少し真面目な顔で考え込んだが、すぐに笑って「きっと今頃は屋根裏部屋で、母のストッキングに顔をうずめて泣いているよ」と言った。
フレッドとジョージとロンはそれを聞いて笑ったが、ハリーとクリスはそれが笑い事ではないと感じていた。
食事が終わると、午後からウィーズリーおじさんのお見舞いに行こうという話しになった。
今回の護衛役はルーピン先生とムーディ先生だ。お昼前、マンダンガスと一緒にムーディ先生がやってくると、良い機会だと思い、クリスはいつ頃サンクチュアリの屋敷に戻れるか先生達に訊いてみた。
「そうだな……恐らくクリスマス明けになる。こちらの行動が『死喰い人』達に読まれている場合があるから、すぐには動けん」
「決まったら、すぐ君に教えるよ。大丈夫、約束は守るから」
「心配しなくても大丈夫だよ」とルーピン先生に笑顔で言われると、クリスはポッと頬が熱くなった。
やはりどんなにシリウスと親しくなっても、ルーピン先生への恋心は冷める事がない。
2人にお礼を言って深々と頭を下げると、クリスは紅くなった頬を隠す様に急いでその場を後にした。