第27章 【それぞれのクリスマス】
ロンが待合室全体に響くような大声を上げた。要らぬ事を、とクリスは頭を抱えたがもう遅い。
ネビルのお婆さんはキリリとした眉を持ち上げネビルを睨むと、ネビルは身の置き場がなさそうにモジモジしはじめた。
「どういう事かね?ネビル。お友達に両親の事を話していないなんて言うんじゃないだろうね?」
「あの……その……」
「ハッキリお言い!何を隠すことがあるのです!お前の両親は誇り高くも闇払いとして、正気を失うまで『例のあの人』に拷問されたと。まさかお前、それを恥に思っていやしないだろうね!?」
「そんなこと思ってない!!」
ネビルが否定するのと同時に、ロンとハーマイオニーがハッと息をのんだのが分かった。
ネビルがお婆ちゃんっ子だという事はグリフィンドールの人間なら薄々気付いていただろうが、まさか両親とも正気を失って病院に入院しているなんて夢にも思わなかっただろう。
偶然とはいえ、その事を知っていたハリーとクリスは、ネビルに何て声をかければ良いのか分からず、気の利いた言葉の1つも出てこなかった。
「ご面会のロングボトムさん、いらっしゃいませんか?ロングボトムさん?」
丁度その時、タイミングよく現れた癒者に案内されて、ネビル達は待合室を後にした。
残されたクリス達は、2人の姿が完全に見えなくなったのを確認すると、緊張が解けた様に息を吐き、やっと口がきける状態になった。
「私、知らなかったわ。だから4年生の時に拷問を受けた蜘蛛を見て、人一倍ショックを受けていたのね」
「そう言えば前に、マルフォイが聖マンゴには頭のイカレた病人がいるってからかった時も、珍しく怒ってたし……」
「やるせないな……なんだか」
記憶が確かなら、ネビルの両親を拷問したのはクラウチの息子たちだったはずだ。
15年近くも両親が正気を失い入院しているという事がどういう事なのか、クリスには想像すらできなかった。
――ただ、きっと寂しいとか、哀しいとか、そんな一言で表せる感情を抱え続けてきた訳ではないと言う事だけは確かだと、クリスはそっと想いを馳せて心を痛めずにはいられなかった。