第26章 【盗み聞き】
「ハリー、彼方大丈夫?食事もとってないって聞いたわ」
「別に……空腹ならダーズリー家で慣れてる」
「そんなんじゃ駄目よ!食事をとらずに良い事なんて何もないんだから。空腹じゃ考えだってまとまらないわ」
「考えって何だよ!僕がウィーズリーおじさんを襲った。それに間違いはないだろう!?」
「彼方が見たのは夢の中だったんでしょう?おじさんを襲ったと言う証明は無いわ」
「証明なんて在って無いようなもんだ!!あいつ程の魔法使いなら何だって出来る!!」
「……証明なら出来るわ」
それまで部屋の隅で大人しくしていたジニーが、小さく、だがハッキリと断言した。
思わずクリス達がジニーの方を振り返ると、ジニーはこの部屋にいる誰よりも落ち着いて見えた。
「私が1年生の時、『例のあの人』に操られていたのを忘れたの?私ならそれがどんな感覚なのか証明できるわ」
そうだ、ある意味でハリーの立場を一番分かってやれるのはジニーだ。そんな事も分からず、自分だけがハリーの理解者だとおごっていた自分をクリスは恥じた。
皆の視線がジニーにくぎ付けになると、ジニーは自嘲気味に息を吐いた。
「それじゃあハリー、質問するけど、気が付いたら自分でも覚えのない場所にいた事はある?」
「……無い」
「何をしていたのか分からず、長い空白期間を過ごした事は?」
「それも……無い」
「じゃあ彼方は『例のあの人』に操られてはいないわ。私が『例のあの人』に操られていた時、気が付いたら覚えのない場所に居たり、何をしていたのか分からない時間が沢山あったから」
ジニーは「これで安心した?」と付け足した。ハリーは穴が開くほどジニーをじっと見て、それから少し視線を落として考え込んだ。
「でも、眠っている間なら――」
「昨日の夜なら、君は一度もベッドから離れてないぜ。のたうち回る君を起こすのに、1分くらい格闘したんだから間違いない」
「ついでに言いますけど、ホグワーツの中ではどんな魔法使いでも『姿現し』や『姿くらまし』は出来ないのよ。例えダンブルドア先生でも『例のあの人』でも、それは変わらないわ」