第26章 【盗み聞き】
黙って唇を噛むクリスに、シリウスは安心させるように頭の上にポンと手を乗せた。
「これは、ハリー自身が乗り越えなければならない壁なんだ。君に出来ることは最後までハリーを信じてあげる事だ。そんな風に自分を責めていたって何も解決しない」
「でも……」
「心配するな、ハリーはそこまで弱くない。きっとすぐに立ち直るさ」
シリウスはそう言ったが、ハリーは夕食の時間になっても部屋から出てこなかった。ハリーと同じ部屋のロンが心配して声をかけに行ったが、ベッドにうずくまったまま返事もしなかったらしい。
クリスにはハリーの気持ちが痛いほど分かった。自分がヴォルデモートの実の娘だと知って、黒い膿の様な感情が体中を駆け巡り、絶望の淵に追いやられた。
きっとハリーも同じ気持ちで、絶望に追い詰められているのだろう。
何かハリーにしてあげられることは無いか。そう考えるクリスとは正反対に、シリウスは14年ぶりに祝うクリスマスに浮かれて、鼻歌を歌いながら屋敷中を飾りつけをした。
これには流石のクリスも、ため息を漏らさざるを得なかった。
夕方になり、窓を打ち付ける雪が強くなりはじめた頃、まさに天の助けとも言える助っ人が現れた。他の誰でもない、ハーマイオニーだ。
玄関でハーマイオニーの姿を見た時、クリスは驚いて言葉が出なかった。休暇前、ハーマイオニーは確かに家族と旅行に出かけると言っていたはずだったから、ハッキリ言ってこれは嬉しい誤算だった。
ロンとクリスは、すぐさまハーマイオニーにハリーの事を話した。するとハーマイオニーは、ハリーが引きこもっている部屋に直行した。
その行動力に、ロンもクリスも感心を通り越し感動すら覚えた。
「ハリー!私よ、ここを開けてちょうだい。話しがあるの」
「ハ……ハーマイオニー!?どうして君がここに?」
「私の事は良いから、とにかくここを開けて。話しがしたいの」
有無を言わさぬ説得に、ハリーはゆっくり扉を開けた。
ハーマイオニーが半ば強引に部屋に入ると、ロンとクリス、そして少し遠慮がちにジニーもそれに続いた。