第26章 【盗み聞き】
ハーマイオニーが最後のダメ押しをすると、ハリーはまるで憑き物が落ちがみたいに、みるみる顔色が良くなっていった。
「それじゃあ、僕は……」
「君は『例のあの人』に操られているどころか、『例のあの人』の手下からパパの命を救ったんだ。胸を張って良いんだぜ」
ロンのその言葉を聞くと、ハリーは込み上げてくる何かを抑える様にギュッと目をつぶってから、肺が空っぽなるんじゃないかと言うほど長いため息を吐いた。
皆の話しを聞いて、ハリーもやっと納得したみたいだ。クリス自身は何もしてやれなかったが、ハリーが元気を取り戻したと思ったら、なんだかこっちまで嬉しくなった。
「ハリー、お腹は空いてないか?食事にしよう」
「うん、実はお腹が空き過ぎて、胃が痛いくらい」
「厨房に行こう。ママに頼んで、何か作ってもらおうぜ!」
ロンを先頭に、5人は部屋を出て階段を駆け下りて行った。
厨房では、既にウィーズリーおばさんが夕食の下ごしらえをしており、いい匂いが漂っている。おばさんはハリーの顔を見ると安心して目を細めた。
「元気が戻ったみたいで良かったわハリー、もうすぐ夕食が出来るから、少しだけ待っててね。悪いけどジニー、ちょっと手伝ってちょうだい」
「分かったわ」
夕食が出来るのを待っている間、ハリー、ロン、クリス、ハーマイオニーの4人はバタービールでのどを潤した。
ハリーは飲まず食わずだったので、よほど喉が渇いていたのだろう、バタービールの栓を開けると一気に飲み干した。
そんなハリーの姿を見ながら、クリスはある事が引っかかっていた。
それは昨夜ハリーが言っていた、『ポートキー』で移動する瞬間、まるでハリー自身が蛇になったみたいにダンブルドアに噛みつきたくなったという言葉だった。
操られていないにしても、ヴォルデモートとハリーの間には絶対に何かがある――。
それが良い事か悪い事かはまだ分からないし、それに折角おとずれたこの平和なひと時を台無しにしたくなかった。
クリスは、不安を覚えながらも、このまま黙っていようと思い、言葉と一緒にバタービールを飲み込んだ。