第26章 【盗み聞き】
これは確か、フレッドとジョージが開発した『伸び耳』とか言うヤツだ。用意周到、と言うより抜け目がない、とはきっとこの2人のことを言うんだろう。
半分呆れながらも、クリスも一緒になって『伸び耳』を使って病室の中の会話を盗み聞ぎした。
「……分かりきっていたけど、その後、蛇の姿はどこにもなかったらしいわ」
「ふむ、きっと蛇は偵察の為だけに送られたのだろう。アーサーを襲ったのはある意味誤算でもあったとみえる」
トンクスの声に続いて、ムーディ先生の低い声が聞こえてきた。クリスはもしムーディ先生の魔法の目がこちらを向いていたら、盗み聞ぎがバレるんじゃないかと思い冷や冷やした。
「ダンブルドアの話しでは、ポッターが一部始終を見ていたらしいが……しかし不思議なもんだ。グレインではなくよりによってポッターとは」
「ダンブルドアは、まるでこんな事が起きると予測していたみたいだったわ。今朝お会いした時、ハリーの事をとても気にかけていらしたわ」
「当然、気にもかけるだろう」
ウィーズリーおばさんが不安そうな声で囁くと、ムーディ先生がことさら低い声で唸った。
「ポッターは『例のあの人』の分身とも言える蛇となって事を見ておる。それがどんな意味を持つか、ポッター自身が気づいていないのはある意味幸福と言えよう。だがもし『例のあの人』がポッターに憑りついているとしたら――」
クリスは咄嗟に『伸び耳』を引き抜いてハリーを見た。
ハリーは眼を見開き、真っ青な顔で震えている。――なんて軽率なことをしたんだろう、これはハリーに聞かせるべきではなかった。それでなくとも今朝まで、ハリーは自分がヴォルデモートに操られているのではないかと怯えていたのに。
「ハリー……」
「そこにいるのはクリスかな?こんにちは」
クリスがかすれた声でハリーの名前を呼んだと同時に、背後から聞き覚えのある男の人の声がした。
振り返るとそこには、バーニー先生がいつもの笑顔を浮かべこちらに向かって手を振っていた。
「どうしたんだい、大勢で扉の前でかたまって?」
「あっ……いや、これはその……」
「ん?誰かを待っているのかな?それなら待合室のソファーの方が良いんじゃないのかい?」
「あ……あぁ~、そうですよね!はは、ははは」