第26章 【盗み聞き】
その中に、1人だけ見た事のある顔があった。昨夜、校長室で見たディリスという銀色の巻き髪の女性の肖像画だ。
ディリスはクリスとハリーに目だけで挨拶すると、額縁から姿を消した。きっと校長室に戻ったのだろう。
それから暫くして、ハリーとクリスも病室に招かれた。ウィーズリーおじさんは、4人部屋の1番奥のベッドに、枕を3つくらい重ねてもたれ掛かりながら休んでいた。
ハリーとクリスの顔を確認すると、ウィーズリーおじさんはまるで大怪我なんてしていない様な朗らかな笑顔を見せた。
「やあ、ハリーにクリス。わざわざ来てもらってすまないね」
「おじさん、御加減はいかがですか?」
「悪くない。包帯が取れれば直ぐにでも退院できるんだが、これが少し厄介でね。包帯を取ろうとすると出血が止まらないんだ。どうやらあの蛇の牙には特殊な毒があったらしい」
確かにウィーズリーおじさんの顔色は少し悪かった。それでも笑顔を絶やさないおじさんに、クリスは父親としての頼もしさを感じた。
それと同時に、父クラウスの事を思い出して少し寂しさも感じた。
「そうそう、ハリーには礼を言わなきゃならないな。ありがとうハリー」
「いえ……僕は何にも……」
「素直に受け取って良いのよハリー。彼方のお陰でアーサーは助かったんだから」
「それでパパ、どんな任務をしていて怪我したの?」
「ジニーッ!!」
おばさんは辺りをキョロキョロ見回しながら、ヒステリックに叫んだ。
確かに騎士団の情報が外部に漏れたら大事だ。それでなくともウィーズリーおじさんの怪我は、ただの動物の噛み傷ではないのだ。
どこから事件のにおいを嗅ぎつけて、魔法省や『死喰い人』が接触してくるか分からないのが現実だ。
それでもしつこく質問する子供た達に、ウィーズリーおばさんは業を煮やし皆を病室の外へと追い出した。それと入れ替わるようにトンクスとムーディ先生が病室に入って行く。
それをフレッドとジョージが恨めしそうに見ていた。
「また俺たちは蚊帳の外ってか」
「まあ待て兄弟。これしきの障害おそるるに足らずだ」
ジョージがそう言いながら、ポケットから薄橙色の紐の束を取り出した。