第26章 【盗み聞き】
少し遅めの昼食を取った後、皆でウィーズリーおじさんのお見舞いに聖マンゴ病院に行くことになった。
クリスは初めて地下鉄というマグルの乗り物に乗れて、ややテンションが上がっていた。そう言えば、これまで月に1回は聖マンゴ病院に通院していたが、煙突飛行以外で行くのは初めてだ。
地下鉄を降り、ショッピングモールに入ると多くの店はクリスマスムード一色に染まり、大勢の人で賑わっていた。
本当にこんなマグルだらけの所にあの病院が?と思いつつトンクスの後について歩いていくと、流行りのショッピングモールには不釣り合いな、赤いレンガの古臭いデパートの前に辿り着いた。
『パージ・アンド・ダウズ商会』と書いてあり、ショーウィンドーには廃れたマネキンが数体立っている。
大きなガラス戸には【改装のため閉店中】という看板がかかっていて、なんとも胡散臭い。
「さあ、みんな準備は良い?」
トンクスがショーウィンドウの前に皆を集めると、廃れたマネキンに向かって話しかけた。
「こんにちは、アーサー・ウィーズリー氏の面会に来たんですけど」
「かしこまりました。こちらへどうぞ」
廃れたマネキンが、病院でよく聞く優しい癒者の声で返事をした。
トンクス、ウィーズリーおばさん、ジニーの3人は、まるで当たり前のようにショーウィンドーを突き抜けて姿を消した。
なるほど、そう言う事なのか。合点のいったクリスは、続いてロン、フレッド、ジョージと一緒にショーウィンドーを通り抜けた。
着いた先はいつも見る聖マンゴ病院の受付だった。相変わらずヘンテコな患者が沢山待合室にたまっている。
何人か顔なじみの癒者がいて、クリスはあいさつ代わりに微笑んだ。
「皆、キョロキョロしないで。こっちですよ!」
ウィーズリーおばさんの声を頼りに、皆でかたまって病院内を移動した。ウィーズリーおじさんの病室は2階にあり、階段を上がって細長い廊下の突き当りにあった。
病室の扉を開ける直前、咄嗟にトンクスが気を利かせた。
「最初は家族だけの方が良いわ。いっぺんに大勢で押しかけちゃ、アーサーに悪いわ」
「そう?悪いわねトンクス」
そう言うと、ウィーズリーおばさんは自分の子供達だけを連れて病室に入った。待っている間、クリスはハリーと一緒に廊下の壁に掛けられた肖像画を眺めていた。