第25章 【夢であれば】
言い過ぎだとクリスは思った。案の定シリウスの視線が一瞬ギラリと鋭く光った。だが、決して怒鳴るようなことはせず、シリウスは座ったままフレッドとジョージを見据えてこう言った。
「心配なのは分かるが、一旦冷静になれ。君達がヘマをしたら一番困るのは君達のお父さんだ。良いか?本当にお父さんの事を思うなら、君達のお母さんから知らせが来るまでここでじっとしてるんだ」
フレッドとジョージはまだ何か言いたげな顔をしていたが、やがてドカッと椅子に座った。それから長い長い沈黙の時が流れた――。
みんな椅子に座ったまま、顔も合わせず、ただ暖炉の薪が燃えるパチパチという音だけが辺りに響いた。
完全に部外者と言って良いクリスは、こんな時どうすれば良いのか分からず、時折バタービールを口にする以外ジッと黙って座っていた。
それからどれくらい時間が経っただろう、食卓の上が一瞬燃え上がったと思ったと同時に、手紙と不死鳥の尾羽根がひらひらと舞い落ちた。
「フォークスからの知らせだ!」
シリウスが叫ぶと同時に、双子が慌てて手紙を広げた。手紙には短くこう書かれていた。
『お父さんは無事です。お母さんはこれから聖マンゴ病院へ行きますけど、あなた達はくれぐれもそこでじっとしているように……』と。
その手紙を見て、全員がホッと安堵の表情を浮かべた。
時刻はまだ午前4時にもなってなかったので、シリウスが皆ベッドに入った方が良いと言い、皆それそれ夏の間利用していた寝室に戻った。
だがとても呑気に寝ていられる気分ではなかった。クリスがベッドの上で何度も寝返りを打っていると、誰かが扉をノックした。
またシリウスかと思って扉を開けると、そこにいたのはハリーだった。