第25章 【夢であれば】
「どうしたんだ?ハリー」
「ちょっと眠れなくて……入って良い?」
「ああ、もちろん」
ハリーは浮かない顔で部屋に入って来た。
珍しい事もあるもんだと思いながらも、クリスがベッドの脇に座ると、ハリーもその隣に腰かけた。
「あのさ、変な事聞いて良い?」
「なんだ?」
「君があんまり夜眠らないのって、悪夢を見る所為?」
「……ああ、そうだ」
今更ハリーに隠すことでもないので、クリスは正直に答えた。
あの惨劇を共にしたハリーになら分かるだろう。絶望と恐怖が織りなす狂気の宴とも言えるヴォルデモートの復活の夜。一言では言えない辛い記憶。きっとハリーもクリスと同じで、あの夜の事を一生忘れないだろう。
決して喜ばしくはない連帯感が、2人を結び付けているのをクリスは感じていた。
「ハリー、何かあったのか?」
「実は、まだ誰にも言ってない事なんだけど……『ポートキー』で移動する瞬間、僕、まるで自分が蛇になったみたいにダンブルドアに噛みつきたくなったんだ。ねえ、これってどういう事なのかな?もしかして僕は知らない内に、ヴォルデモートに操られているのかな?」
「分からない……でもこれだけは言える。ハリー、君は誰かを襲うなんてことは出来ない人間だ。それにもし操られるとしたら、それはきっと――私の役目だ」
――そうだ、私はその為に生まれてきたんだ。ヴォルデモートの手駒として、人に破滅をもたらす道具として。
クリスは腕輪の上から左手首を握った。そこにはかつての温もりも何もなく、ただ冷たい金属の感触だけが伝わってくるだけだった。