第22章 【パンドラの箱】
――そう思っていたのが大きな間違いだったと言う事に、この後クリス達は痛感させれる羽目になった。
ウィーズリーこそ我が王者
ゴールをちっとも守らない
だから歌うぞ高らかに
スリザリンの救世主
ウィーズリーこそ我が王者
見た目は脆弱 腕は貧弱
財布の中はいつも金欠
豚小屋生まれのウィーズリー
「……あの歌、ハーマイオニーの魔法でどうにかならないのか?」
「なったら、もう既にどうにかしています!」
グリフィンドールの反対側の応援席から、声を揃えての大合唱が響いてくる。それもこれも全部スリザリンチームからの嫌がらせだ。
この歌の所為か、ロンの動きは悪く、もう3度もゴールを許している。ハリーは気が気じゃないのか、ブラッジャーがなんども体をかすめている。
これまで見てきた数少ない試合の中でも、今日の試合は最も出来が悪い。
「落ち着けー!大丈夫、まだ挽回できるぞーー!!」
あまりのお粗末っぷりに、珍しくクリスが真面目に応援してしまった。ハリーはともかく、ロンのプレイは見ているこっちがハラハラしてしまう。
ついに4回目のゴールが奪われた時は、思わず心臓がドキドキした。しかし、その後アリシアが見事ゴールを決めてくれて、少しホッとした。
スリザリンの耳障りな応援歌の中、時折ライオンの吠える声が聞こえる。きっとルーナの帽子だろう。その吠え声に励まされるよう、クリスも声を張って応援した。
とにかく早くハリーがスニッチを見つけてくれ。そう思っていると、ハリーがスリザリンチームのゴールポスト目掛けて急降下した。
やった、スニッチを見つけたのだ!もちろんドラコもそれを追って急降下していく。
ポジション的にはドラコの方が有利に見えたが、寸前のところで、ハリーがスニッチを掴んで腕を上げた。
その瞬間――ハリーの背中にブラッジャーが激突して、ハリーが箒から投げ出された。
クリスは息をのみ、咄嗟にピッチへ駆け出した。
「ハリー!ハリー!退いてくれ、ハリー!!」
人ごみをかき分け、クリスはハリーのもとへ走った。
スタンドには既にチームメイトが集まっている。幸いハリーに大きな怪我はないようだ。
ホッとするのもつかの間、ハリーの傍に立っていたドラコが意地の悪い目でハリーを睨んで何かを囁いていた。