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ハリー・ポッターと沈黙の天使

第22章 【パンドラの箱】


 先生の雰囲気と、怒るというより優しく諭すような先生の物言いに、クリスは自然と肩の力が抜けてきた。それから病気の原因には触れず、簡単な質問を2、3してから実際のヒーリング治療に入った。
 診察室の脇にある簡易ベッドに仰向けになり、深呼吸をしてから目を閉じるよう言われた。言われた通り目を閉じると、足の先の方からジワリと暖かい空気が上ってきた。

「今、君の魔術回路に直接僕の魔力を注ぎ込んでいるんだ。そうすることで、普段使わない魔術回路にも魔力が通いやすくなる」

 バーニー先生の話を聞きながら、クリスは1年生の頃、初めて杖を買った時のことを思い出していた。
 あの杖を握った手から流れ込んでくる暖かい不思議な力が、今は先生の手を介して全身をめぐっている。
 ヒーリング治療は足のつま先から頭のてっぺんまで、小1時間程かけて行われた。とても気持ちよくて、これなら毎月通っても悪くないと思えた。

「はい、今日の治療はここまで。予約を取っておくから、来月の同じ時間にまたおいで。それまでに課題を出しておこう。まずは1日に1回は魔法を使おうとすること。それから朝食はシッカリ取ること。いいね?」

 バーニー先生がニコッと笑うと、優しい目じりのしわが余計に深くなった。ルーピン先生とダンブルドアを足して2で割ったような印象のバーニー先生は、柔和でとても穏やかでクリスにとってすごく良い印象だった。
 それに、頼りになる大人がいるという事が、クリスの心に大きく影響を与えていた。

 2回目のDA集会の時、ネビルがハーマイオニーの武装解除を見事やってのけたり、コリン・クリービーが妨害の呪いを成功させたのを見ても、クリスの心には余裕があった。
 しかし、第3回目の会合の時、いつもの様にネビルと組になって練習をしようとしたら、ネビルから申し訳なさそうにこう言われた。

「あの……今日は別の人と組んでもいい?ぼく、もっと練習したいんだ」

 この言葉を聞いた時、クリスは表情が凍りつき、心臓に槍を突きたてられたような気分がした。
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