第3章 参ノ型. 初任務 ~煉獄杏寿郎の場合~
「否!全く存じ上げません!!」
煉獄の勢いにお館様はふふっと笑う。
そして一瞬考える素振りをしてから、
「彼女が柱だった時まだ私は3つの歳でね余り良くは覚えていないのだけど、優しく聡明で私とよく遊んでくれ外の世界の事を教えてくれる人だったんだ。」
そう言い、そして、と繋げる
「露柱であった彼女もまた、弔いの鬼殺をする隊士として有名だったんだよ...」
「弔いの鬼殺...」
煉獄が訳が分からないという顔をしたのを見て、お館様は更に続ける。
「鬼は悲しい生き物、もし最後の瞬間自分の行いを悔やんでいるのならせめて安らかに鬼ではなく人として送り出してあげたい。それが彼女の口癖。言葉の通り、彼女は鬼殺の時誰よりも鬼の話を聞き誰よりも優しく鬼を送り出していた。」
「鬼に対する慈悲など理解し難い!」
飛びかからんばかりの勢いで反論する煉獄に、お館様は静かに続ける。
「そうだね、無理に理解しろとは言わないよ。只、そういう考えもあるのだと頭の隅に置くだけでいい。実際当時も彼女の考えに反感を持つ隊士もいたけど、彼女の強さや人格に徐々にその信念を否定する者はいなくなったそうだ。」
「信念.....」
「刹那はお母上に似たんだろうね、杏寿郎の話を聞く限り戦い方が露柱によく似ているよ。」
お館様の話を聞いて煉獄は黙り込む。
勢いよく存じ上げぬと言った割には、少しだけ聞き覚えのある【露柱】というその響きに必死で記憶の糸を辿る。
思えば昔、まだ情熱ある柱であった頃の父にそのような話を聞いたことがあったような。
(そうだ、俺がまだ小さくもっと強くなりたいと父上に語った時。あの時父上は確か....)