第3章 参ノ型. 初任務 ~煉獄杏寿郎の場合~
同日某時刻 鬼殺隊本部
刹那との初任務を終えた煉獄は一度お館様への報告を兼ねて、本部へと来ていた。
「そうか、鬼がそんな最後を....」
煉獄から今回の任務の事を聞いたお館様は言葉とは裏腹に、全て分かっていたような微笑みを浮かべる。
「それで、杏寿郎はそれを見てどう思った?」
お館様にそう促され煉獄は頭の中で何度もあの瞬間反芻した。
苦痛の無い至極幸せそうな顔で消滅する鬼。
完全に消えてしまうまで、鬼を優しく見つめていた刹那。
刹那が鬼の足を切り落とした辺りから手を貸す必要は無いと判断し、
小屋の入口から様子をうかがっていた煉獄だが、鬼の最後の言葉はハッキリと耳に届いた。
《ありがとう》
およそ鬼殺を行う中で中々聞くことの無い言葉。
ましてや、鬼の口からなど。
刹那が鬼を倒すまでの行動や言動、
刹那に対する鬼の態度。
その全てが煉獄が今まで関わってきたどの任務でも見たことの無いものだった。
自分の知りうる言葉で表現するなら
あれは、
そうまるで、
(彼女の鬼殺は.....)
「弔いのようでした...」
ポロリと出た言葉がしっくりと馴染んだ。
鬼に対する恨みや怒りと言うよりも、哀れみや慈しみ。
そんな感情を滲ませる刹那のあの瞳が、どうも心をザワつかせて頭から離れてくれない。
「弔い...杏寿郎、刹那のお母上、露柱の事を知っているかい?」