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ナルシサス。【煉獄杏寿郎】

第12章 拾弐ノ型.焦がれる





だったら何故、


自分はあの時、猗窩座と煉獄が戦っていたあの瞬間助ける事が出来なかったのか。


そんなにも強い力を持った呼吸の使い手だと言うなら何故、



今煉獄は生死の境をさ迷わねばならないのか。



ぐるぐると目眩がするほどに押し寄せる後悔と、悔しさに鼻がツンと痛くなった。

しかしそんな炭治郎の心情を知らない槇寿郎は、更に大声をあげる。




「"日の呼吸"の使い手だからと言って、調子に乗るなよ小僧!!」



言われた言葉は、炭治郎にとってあまりにも酷で、



「乗れるわけないだろうが!!今俺が自分の弱さにどれだけ打ちのめされてると思ってんだ!この糞爺!!煉獄さんの悪口言うな!!」



思い起こされる己の非力さと、
未だ煉獄を罵倒する槇寿郎に、今にも槇寿郎に殴りかからんとした時だった。


見慣れた姿が炭治郎のすぐ横を走り抜ける。



靡く黒髪と印象的な羽織。


刹那だ。





そのままの勢いで槇寿郎へと迫る刹那。

バチンとなった乾いた音に、刹那が槇寿郎を叩いたのだと一拍遅れて炭治郎と千寿郎は理解した。



『もう、お辞め下さいまし。』



至極丁寧な口調で言った刹那の顔は明らかに怒っている。
無理もない。
先日自身が救った息子を罵倒する父親を、誰が良しとするのか。




『何故槇寿郎様は素直に杏寿郎が生きていたことを喜べないのですか。杏寿郎の事を思うと、私は今にも胸が張り裂けそうでございます。』




刹那に言われ槇寿郎は暫し呆然とその場に立っていたが、はっとしたようにまた厳しい表情へと戻る。



「五月蝿い!!お前も俺を馬鹿にしているのか!杏寿郎は弱いからこうなった!それだけの事だろう!!」


槇寿郎の言葉に、またひとつ刹那の眉間に皺が増える。

刹那の怒りの匂いを感じ、まずいと思う炭治郎だったが、

ここで感情任せに喚き散らすほど刹那は子供ではない。



「杏寿郎が死を覚悟した時、彼に託した言葉を知っていますか?」



興奮する槇寿郎に言い聞かせるように、刹那は静かに呟く。

しかしそんな刹那の態度は更に槇寿郎の怒りを助長させるものにしかならない。


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