第12章 拾弐ノ型.焦がれる
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煉獄が昏睡状態になり早1週間。
蝶屋敷で善逸が喚いていることを知らない炭治郎はふらつく足で、慣れぬ土地を進む。
頭上には煉獄の鎹鴉。
(煉獄さんの鴉...ありがとう。煉獄さんの意を汲んで案内してくれている...)
鎹鴉は煉獄と、そして炭治郎の意志を汲み、蝶屋敷からここまで炭治郎の歩幅に合わせて道案内をしてくれた。
時折振り向き炭治郎を按じつつ飛ぶ鎹鴉に、まるで煉獄が案内してくれているようだと錯覚してしまう。
(優しい人の鎹鴉は、性格も優しくなるんだろうか?)
なんて考え、
自分の口の悪い鎹鴉を思い出し、項垂れるくらいの余裕が炭治郎にはまだあるようだ。
「はぁ、はぁ...」
時折顔を歪め永遠荒い呼吸を繰り返しながら歩いていたが、炭治郎はふとその足を止める。
(あそこだ、良かった。ちゃんと着いた...)
少し先、大きな邸宅の門前に見える特徴的な髪色。
無事到着したことへの安堵と逸る気持ちを抑えつつ、煉獄に教えられた名を呼ぶ。
「千寿郎...君?」
炭治郎の声で掃除の手を止めた千寿郎は、ゆっくりと振り向いた。
まだ幼いが煉獄とよく似た瞳と燃えるような髪。
それだけで炭治郎は泣きそうになる。
死んだ訳では無い、それでも今煉獄は危険な状態だ。
暗い顔の千寿郎の気持ちが分かってしまうだけに、炭治郎の胸は締め付けられるように傷む。