第5章 Aiba.
広い広い部屋が、
今や愛里ちゃんがいる。
まだ話せないけれど、きっといつか…。
『……』
足音がしたと思えば愛里ちゃんが
悲しそうな表情で立っていた。
お酒を飲んでた俺は缶を置き、
「どうしたの?」
そう聞いたけど、微笑むだけ。
怖い夢を見たのかな。
それとも、出て行くなんて…。
『……(居なくならないで)』
紙に震えた字でそう書かれていた。
いつもなら綺麗で読みやすいのに。
居なくならないで、その言葉に驚く俺。
『…(もう、独りぼっちはイヤなの)』
大切な人でも、お母さんみたいに
きっと居なくなってしまう。
傍にいたいとそう願ってしまっても、
怖くて逃げ出すかもしれない。
それでも今は、
貴方と一緒に居たいとそう思ったの。
涙で滲む字、
顔を見れば泣いていて。
思わず俺は彼女をギュッと抱きしめた。