第5章 Aiba.
ガチャ
ひとり暮らしの割に広い部屋、
友人にそう嫌味を言われる。
学生だけど芸能人な俺は、
その言葉は"売れてる"と同じぐらい
嬉しい褒め言葉だ。
「さ、どーぞどーぞ!
何もないけど自由に使ってね!」
彼女はニコッと微笑み、荷物を
ソファーに置いた。
「部屋、案内しよーか。」
沈黙が苦しくて、何となく出た言葉。
いくら部屋が広くったって、
場所ぐらいなんとなく分かるだろ。
うん、これは欲張りなんだ、
と一人で思ってると、
彼女は微笑みながら頷いた。
どうやら俺の気持ちは見透かされてる。
めっちゃ恥ずかしい。
「…おいで、まずトイレとお風呂。
そこはきちんと知っとかないとな」
誤魔化すようにさっさと歩く俺。
あー惨め、情け無さすぎる。