刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第49章 刀剣男士の苦悩と決断
宴の喧騒から一歩離れると、夜の空気はひんやりとしてどこか澄んでいる。私を起こさないよう気を配りながら、本丸の廊下を静かに進む足音が規則正しく響く。
やがて執務室を抜け、私室のドアを開け部屋へ入った。ベッドに下ろされる瞬間、私は無意識に彼の服を掴んでいた。
「…」
大倶利伽羅さんは、服を掴んでいる私の指を優しい手つきでそっとほどく。
「…安心して寝ろ」
それは、誰にも聞かせないほど低い声。
掛け布団を整え、寝顔を一瞬だけ見下ろすと彼は小さく息を吐いた。
「――もう、無理はしなくていい」
そう呟いて、部屋を出る前に一度だけ振り返る。そしてドアを静かに閉めた。
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山姥切国広は、縁側近くで一人盃を手に夜風を受けていた。騒ぎに加わるでもなく、離れすぎるでもない距離。その背後に気配が落ち、彼が振り向くより先に低い声がした。
「山姥切国広…」
「…大倶利伽羅か」
振り向かずとも声でわかる。大倶利伽羅は山姥切の隣にそっと腰を下ろした。並ぶように座っているが視線は月へ向けたまま。しばらく二人とも何も言葉はなかった。
「……作戦中、あんたが前に出てこなかったのは…正解だった」