第4章 食事
彼のため息を聞き、つい俯いてしまう。
「バーカ」
「なっ……!?」
思いもよらない台詞に驚き、顔をあげる。
彼はいつもの表情よりも、少し柔らかい笑顔で私を見ていた
「そんな悩むほどのもんじゃねえよ。昔みたいに話してくれりゃいーわけ。」
「……でも、」
「でもも何もあるか!第一、前はあんなに軽口叩いて、タメ語だったのに今になって敬語ってこっちが調子狂うわ」
そう言われて何も言い返せなくなる
確かにあの頃の自分はキバナさんとの試合で軽口を叩いていた
「……あれは元はと言えばキバナさんが言ってきたから、言い返しただけで……」
「2回目くらいだけだっただろ。それ以降全部オマエから言ってきてたぞ」
「えっ……ほんと記憶力いいですね……」
そうして思い出話をしていくうちに、いつの間にかあの頃のように会話ができるようになっていった。
少し敬語が出てしまうけれど、かなりスムーズに話せるようになった
たまに彼が煽るような言い方をするのは、あの頃のような会話をしようとしてくれてるんだろうな……。
ああ、本当に優しい人だ
飲み物を手にとり、一口飲む
昔話に花を咲かせたのはいつぶりだろうか。いや、そもそもこうして楽しく会話をすること自体久々な気がしてくる。
ゆったりとした雰囲気でいると、突然バッグからスマホロトムが飛び出してきて画面を見ろと言わんばかりにアピールをしてきた
「わっ!?お、落ち着いてロトム…!見せてくれる?」
そういうと大人しくなり、手に収まってくれた。
キバナさんに断りを入れ、中身を見る。どうやら今度の合コンのグループチャットの通知のようだ。
これまで見たことのないくらいの通知の量にたまらずロトムが飛び出してしまったのだろう。
グループをミュートにしてスマホロトムをバッグの中に収める
「大丈夫か?」
「うん、今度行く合コンのグループチャットの通知にロトムが驚いてしまったみたいで……」
そういうとキバナさんは少し眉を潜めた……かと思ったが、すぐにいつもの表情になっていた。……あれ、気のせいかな
「合コン?」
「エーート、そろそろ結婚も視野に入れないとまずいかなぁ……と。親も煩いので、出会いを求めに!」
なんで私はキバナさんにこんなことを説明しているんだ……!と、少し悲しくなる。うぅ、恥ずかしい……