第4章 食事
着いたらわかる、と言われたが、本当にそうだった
私も一度は行ってみたいな、と思って気になっていた
SNSで話題になったお店だった。
看板メニューはパフェだが、メニューもとても美味しく、その良さからどんどん口コミも広がり話題になったのだ
「さ、行くぞ」
そういうと軽く私の腕を掴み、ズイズイと店に入っていく。
心なしか、キバナさんは楽しみにしているように見えた……のは、きっと私が楽しみにしているからだろう。
背が高いので、どうしても掴まれる位置が腕になってしまうのは仕方ないけれども、引っ張らなくても着いていけるのになぁ……と、心の中で思うが、口にはしなかった
ーーー
撮影音が数回鳴り、画面を見て満足したのかスマホロトムをしまう彼を見る
やはりSNSは彼にとって大きな存在なのかなぁ、とぼんやり思う。
見る専門の私は発信する側の気持ちのことは難しい
「ああ、ごめん。さ、食べようぜ」
「はい。いただきます」
手を合わせて頼んだパスタを食べ始める。
どのくらい美味しいのかなー、なんて軽く考えていたが、人気になる理由がわかった。
めちゃめちゃ美味しい。しかも個室分けされているので、プライベートが守られる。これは人気になるわけだ…
料理に集中していると
「なぁスズ、ポケモンたち元気か?」
「はっ、はい!元気に過ごしてます」
びっくりしてつい大きめの声になってしまい、慌てて口を抑える
キバナさんは笑みを絶やさず、「そうか、それならよかった」と言ってくれた。
ああ、優しい人でよかった……
「……ところでさ、何で敬語なわけ?オレ様たちあんま歳かわんねーと思うし、それに前は敬語じゃなかっただろ?」
「えっ……それ、は……」
安堵したのも束の間、かなり重たいボールを投げられた私は言葉に詰まった
もう、ジムチャレンジャーじゃないから
一般人と、ジムリーダーですよ
……頭ではわかっていても、言葉にはできない。
だって、それを言ったら
まるで、自分で自分の首を絞めているかのように感じてしまいそうだから。
現実逃避なのもわかっているけれど、踏み出せない
モヤモヤモヤモヤと、ずっと考えている私を見ていた彼は深いため息をついた