第4章 食事
夜が明けてきたが、未だ辺りは静かな時刻
設定していたアラームが静けさを引き裂くように鳴り響く。
「ん……」
私は手を伸ばし、画面をタップする。
再度静かになった空間にもう一度寝てしまいたくなるが、気合を入れて起き上がる
ああ、これからキバナさんと食事か……。
ふらりと立ち上がり、洗顔やら化粧やらをして身支度を整える。
朝ごはんは市販のパンで済ませてしまおう。
本当は料理をしたかったけれど、身支度で時間がかかったので簡単に済ませる
服装選びが時間かかった理由としては、あまり気合いを入れすぎると浮いてしまうんじゃないか。
彼女でもない私がそんな気合いを入れた格好で行ったら、キバナさんだって「なんだこいつ」ってなってしまうんじゃないか、という証拠も何もないが、強い不安からだ。
選んだのは無難な服装。
スカートとかではなくズボンにして、どちらかというとスタイリッシュな格好にした。
まぁ……そういう系の服が多いからだけども…。
フヨフヨと近づいてきたスマホロトムの画面を見る。約束の時刻まで刻一刻と迫っていた
ーーー
予定の30分前に、約束場所に行くと、すでにキバナさんらしき人が立っていた。
その姿を見て、駆け足で歩み寄る。
「す、すみません!待ちましたか…?」
「いや、オレ様が早かっただけだから大丈夫だ」
声をかけると、トレードマークのバンダナをつけた彼がいた。
私服のキバナさんの全身をチラチラと見る。
ジムチャレンジをしていた頃によく見ていた特徴のあるパーカーとユニフォーム姿ではなく、完全に私服であろう姿
一ファンとしてはこの姿を見ることができただけで充分である。格好いいな……と少しドキドキする。これはどちらかというと推しに会えた感動に近いなぁ…
「行こうぜ。ここから結構近いんだ」
歩き始めた彼の少し後ろをついていく。
これから行く食事場所は私は知らない。キバナさんが行きたかったらしいお店というのは聞いているんだけども……
「あの、どういうのがあるお店なんですか?」
そう尋ねると、少し考えるそぶりをしたあとこちらを向いて
「行ってからのお楽しみ……な?」
そう言ってニッと笑った。
私はそんな彼の顔を見て、この後無事に生きていけるだろうか。と謎の不安が出てきたのであった