第8章 私を捨てないで
焦凍にシャンプーされ、ふと口を開く
「…ねえ…焦凍」
「何だ?」
「…お父さんのこと、聞いちゃ駄目…?」
「…」
そのときに感じたのは、苛立ち。そんなに、お父さんが嫌いなの…?
「俺の親父は、エンデヴァーだ」
「…誰?」
「万年二位のヒーロー」
「おけ了解」
「…あいつは、自分の力では一位になれないって思った」
「へぇ、諦めたの?」
「いや、次の手段に出たんだ」
次の手段…?
「オールマイトがやめるのを待った…とか?」
「いや、個性婚って知ってるか?」
「…お婆ちゃんが、やってたやつ。それでお母さんができたってことは聞いたことあるけど…」
「…割と近いんだな。親父はその手段にでた。お母さんの個性を金で買収して、それでできたのが俺だ」
「…なんか、ゴメンね。嫌なこと聞いちゃったよね」
「…なぁ、奏は…俺のことを、個性とか親父で見てないよな…」
「…私は、焦凍が好き。それだけは確実だよ」
「…奏は、保護者って言ってるけど、それは親じゃないから…なんだよな。誰なんだ?親戚か?」
「…その時近くにいたヒーロー。焦凍も知ってるはずだよ。担任だもん」
「相澤先生がか…?でもおかしくねえか?保護者と子供は同じ学校でも担任にすることはないんじゃ…」
「三月がいるでしょ?あの存在に誰も気づかなかったから、特別監視体制でイレイザーが雇われてる雄英に行けただけ。まぁ勉強はそこそこできるはずだけどね?」(中間テスト2位)
「…なんか、色々すげえな」(中間テスト5位)
「…でも、本音を言うとヒーロー科なんて入りたくなかったんだよ。仕方ないって割り切ってるけと」
「…なんでだ?」
「ただの逆恨みだけど、もうちょっと早かったら、お父さんもお母さんも助かってたって、考えちゃうから。ヒーローは嫌いだけど、なりたいって言う変な感じ」
「…お前ならなれんだろ」
「…それでできたらいいね」
「あ、シャンプー流すぞ」
「ん」
かなり長い間シャンプーされてた気がする