第29章 アルバーナへ
「ビビちゃん…コイツは君が仕掛けた戦いだぞ。数年前にこの国を飛び出して、正体知れねぇこの組織に君が戦いを挑んだんだ。」
そうだね、ビビから戦いを仕掛けた。だから、落とし前は自分でつけなきゃいけない…なんて、ビビは考えてるのだろうか。最初からルフィは、クロコダイルを倒すという目的の為にここまで来てることを忘れちゃいけない。最初はみんなここへ送り届けることを渋々という感じだったが…航海する度に私達は確実に仲間になっていった。だから…ギュッ、と握りこぶしを作って願うように顔をうつむかせる。自分が震えているのが分かった。不自然に止まったサンジの言葉に疑問を覚え、顔を上げると…サンジは言っていいよ、みたいな顔で私を見ていた
「ビビ…」
「…なまえさん」
「お願いだから…!!!もう1人で戦ってるなんて思わないで!!!私達を頼って!!!」
ルフィも言ってたことだが、まだビビは心が追いついてなかった。国を思う気持ちは確かに誰よりも強いけど、ビビを助けたいと思う私達の気持ちを無下にされては困る。せっかく、強い味方ができたというのに。
「ビ…ビビビビ!!!心配すん…パイスン…スンぱいなよ!!!おれガツ…ガッツいて…」
ふっ、と力が抜けた。壊れた機械かな、ウソップは。せっかく私がいいこと言ったっていうのに。でも、気持ちは分かる。みんなは強い、強いけど私達にも限界がある。ルフィやゾロ、サンジは敵なしって感じだけど、そこまで強くない私達はやっぱり怖いのだ。助けたいという気持ちはあるけど、体がおいつかない。
「ルフィさん!!!『アルバーナ』で!!!待ってるから!!!!」
「おォオオ!!!!」
ルフィからの返事が返ってきた瞬間、私の力は抜けてペタン、と座り込んでしまった。やってしまった、という後悔とこれから起きる戦いに怯えているのだ。そりゃそうでしょ。
「なまえ。」
不意に名前を呼ばれて見る。ゾロだ。そっちから名前を呼んでくれるなんて珍しい。
「よくやった。」
「う……」
お前は私のお父さんか!!緊張の糸が解けて泣きそうになる。でも、ここで泣いたらビビが不安になってしまう。チョッパーの後ろ、つまりビビがいる反対側に移動して少しだけ泣いてしまった。ゾロに背中をポン、と叩かれサンジには頭をくしゃ、と撫でられた。お前らそれ狙ってやってんのか?泣きわめくぞ。
