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パンひとつ分の愛を【ONE PIECE】

第7章 トラ男とパン女の攻防戦




「……おい、聞いているのか?」

ペンの先で二の腕をちょんとつつかれ、ハッと意識を取り戻す。

「はい! 聞いていましたよ? ええ、バッチリ!」

「……。」

握り拳を作ってアピールしたが、ローの目が胡乱そうに細まる。
集中力が切れたとバレてしまったようだ。

「休憩するか。」

「いや、まだ大丈夫です。始めたばっかりですし、うん、大丈夫!」

「大丈夫そうに見えねェんだよ。言っただろ、気分転換は必要だ。」

「うー……。」

集中力が低い自分が恥ずかしい。
いくら嫌いな勉強だとはいえ、わざわざローが教えてくれているのに。

「まだ明日もある。今日はもう、休んだっていい。」

「ダメダメ、甘やかさないでください。うっかり甘えたくなるんで!」

背後にあるベッドが呼んでいる。
こっちにおいで、勉強なんてやめちゃいな、と甘くムギを誘ってくる。

「気分転換、します。」

「そうしろ。コーヒーでも淹れてきてやる。」

「あ、自分で……。」

「いいから座っとけ。あまり根詰めるなよ?」

なんて優しい先生なんだ。
ムギの担任の先生なんか、平気で生徒を馬鹿呼ばわりするし、平気で頭を叩いてくる。

「ありがとうございます。濃いめでお願いします……。」

「わかった。」

ローがリビングへ消えると、途端に睡魔が忍び寄ってきた。

(眠い。……寝ちゃダメだ、頑張らないと。)

座っていたら寝落ちしてしまいそうな予感がして、とりあえず立ち上がった。

テーブルの周りを無意味にぐるぐる歩き、それでもやはり眠気は消えない。

(ダメだ、最終手段を使おう。)

眠い時には、テンションを上げるなにかが必要だ。
そう思ったムギは、キャビネットの上に置いてある大事な瓶を手に取った。



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