第7章 トラ男とパン女の攻防戦
「いや、無理ですね。なに考えてるんですか?」
「あ? お前のことを考えてるに決まってんだろ。」
自信満々に言いきってくれるが、そういうことを聞いているのではない。
「そうじゃなくて、ここは外です!」
「だからなんだ。」
あれ、もしかして話が通じないのかな?と本気で考えてしまったムギを許してほしい。
でもよく考えてみたら、当初からローはあまり人目を気にしない人。
そして、自分の思うとおりに行動する人でもある。
ムギの答えを待たずに近づいてきたローの顔。
これはマズイと身体を離したくても、絡みついた腕は容易にムギの自由を奪う。
「ちょ……!」
べちん!とローの顔面に手のひらを叩きつけて押し退ける。
イケメンのお顔、ごめんなさい。
だけど不可抗力です。
「……なにしやがる。」
「こっちのセリフですよ! やだって言ってるじゃないですか!」
「うるせェな、自分の女にキスをしてなにが悪い。」
「な……ッ」
自分の女。
思わずムギは固まった。
ローが好きだと自覚した。
ローが好きだと告白した。
そうなると、行き着く先は……ひとつだけ。
「あ、わたしたち……付き合う感じですか?」
「……おい、ふざけんなよ?」
それは、どういう意味の“ふざけんな”だろう。
お前如きが図々しい……という意味ではないと願いたい。
「あのぅ、ローってまだ、わたしのことが好きでした?」
これは一番重要だ。
答えによってはムギの片想いなのか、両想いなのかが決まってくる。
ともすれば自惚れにも捉えられる質問に、ローの機嫌が急降下した。
「おい、てめェ……ふざけんなよ?」
今度の“ふざけんな”は、先ほどよりも遥かに温度が下がった。
どうやら、お怒りのご様子。