第7章 トラ男とパン女の攻防戦
考えてみれば、ローはムギの交友関係に詳しくない。
彼女のすべてを知りたいと思っているくせに、とんだ盲点だ。
どう見ても系統が異なるプリンと仲良くしているあたり、交友関係は幅広いのだろうと予想できた。
いつか、ムギがベポたちに混じって遊んだように、自分も彼女の友達の中に入る時が来るのだろうか。
顔も名前も知らない女になど絶対に関わりたくないはずなのに、ムギの友人だというだけで悪くないと思えるのだから、恋とはやはり盲目だ。
「その友達ってやつに、原因を聞いてみりゃいいじゃねェか。」
「聞きましたよ。でも、教えてくれなくて。」
もっともらしい助言をしたら、膨れたムギ頬が元に戻って視線も返ってくる。
萎んだ頬を残念に思ってしまう自分は、やはりどこかおかしいのだろう。
「なら、お前に自分で気づいてほしいってことだろ。」
「……それも、本人に言われました。」
「そうか。なら、そうしてやれ。どうでもいいやつになら、そんな面倒くせェ要求はしない。そいつにとってお前は、大事なダチなんだろうな。」
慰めるつもりじゃなく、ただ思ったことを口にしただけ。
けれどもローの言葉はムギに響いたらしく、縋るような目つきで見上げてくる。
「どうしてローにそんなことがわかるんです?」
「簡単だ。俺がお前のダチなら、同じことを思う。」
「……。」
「……まあ、俺はお前のダチになる気はさらさらねェが。」
「台無しです。ちょっと感動したのに。ていうか、いつまで手を回してるんですか。さっさと離してください!」
眦を吊り上げてキーキー文句を言うムギは可愛くはないが、代わりに元気は出たらしい。
本当は離したくなかったけれど、しょうがないから解放してやった。