第7章 トラ男とパン女の攻防戦
ローはムギを手離すつもりがないけれど、口で言うほど自分たちが付き合っているとは思っていない。
言質を取った以上、いずれは然るべきポジションに収まるつもりでいるが、それはもう少し先の話だと思っている。
しかし、関係が進展しない一方で、困るのは膨らみ続ける独占欲。
スケジュールを把握するのは当然として、空いた時間は自分が独占したいと常に考えている。
だから、ムギが土日に会ってくれないことを当然ながら不満に思う。
予定を教えてくれないとなれば、なおさらに。
「で? 土日はなんの予定があるんだ。」
「だから、黙秘だって言ってるじゃないですか。」
隠されれば隠されるほど暴きたくなるものだと、どうしてわからないのだろうか。
本当に知られたくないのなら、適当な嘘でもつけばいいものを。
「なるほど、つまりそりゃァ……尋問してほしいという遠回しな希望か?」
「……は?」
言うが早いか、空いた片手でムギの腰をぐっと抱いた。
途端にまん丸な瞳が動揺を語って揺れ、頬が赤く染まってくる。
乙女らしい反応に湧き上がってくる熱をぐっと堪え、乾いた唇をぺろりと舐めた。
「素直に吐きゃ、よかったのにな?」
捕食者の目で見下ろしたら、一瞬ムギはびくりと震えたが、ローの言葉が引っ掛かったのか、顔色を変えて視線を逸らす。
「……どうせ。」
「あ?」
「どうせ、素直じゃないですから。」
拗ねたように呟く様は、なんだかとても……可愛かった。
まあ、そんなことは口に出せるわけもないので、押し黙って心の葛藤に耐える。
「素直じゃないし、真っすぐでもないし、可愛くもないし。」
「待て、そこまで言ってねェだろうが。」
「……別に、ローに言われたことじゃなくて。」
唇を尖らせ、視線を地面に落としたムギは、なんだか落ち込んでいるようにも見えた。
腰を抱いたローの手を叩き落とさないのがいい証拠である。
まあ、ローとしては都合がいいのだが。