第7章 トラ男とパン女の攻防戦
「なぁ、トラなんとか先輩とは、最近どうなんだよ。」
「ど、どうって?」
ボニーはプリンとは違って、ローとのことをそれほど掘り下げて聞いてこなかったから、ムギの心は妙にどきまぎする。
「決着、ついたのかなぁって思ってさ。」
「ああ、えっと、まだ……。」
ローとは早く別れたい。
というより、最初から付き合っていないけれど、ローの認識を改めさせたいのだ。
何度も意気込み、ボニーの前でもそう宣言をしている。
しかし、現状はなにも変化がなくて、なんとなくボニーに対して罪悪感を覚えてしまう。
宣言したからには、ちゃんと実行しないといけないのに。
「わたし、意志が弱いのかな? きっぱり断ろうとは思っているんだけど。」
意志が弱いというか、実際はローの弁が立つだけ。
それに行動が伴って、ムギはいつも煙に巻かれてしまう。
「ローはさ、もっとちゃんとした女の子を選んだ方がいいと思うんだよね。」
「へぇ、例えば?」
「えっと……。」
例えを求められると困る。
ムギはあまりローの好みを知らないからだ。
彼はムギを好きだと言うけれど、好きな女性のタイプがムギというわけではないだろう。
でも、ローを好きになる女性ならたくさんいる。
例えば、今朝バラティエに来た女子高生とか。
彼女の熱がこもった瞳を思い出して、不意に胸がざわついた。
「ムギ?」
「あ……、ごめんごめん。例えはちょっと思いつかなかった!」
胸を掠めた不快感を誤魔化すように笑ったら、大きな弁当をちょうど食べ終えたボニーの眉間にきゅっと皺が寄った。
「どうしたの?」
「……別に。ただ、私はムギの素直で真っすぐなところが好きだから。」
白い太腿を曝し、寒さをものともせずに足を組んだボニーは、ムギから視線を外して呟いた。
「今のムギは、あんまり好きじゃねぇな……。」
「え……。」
一番の親友から控えめな拒絶を受け、一瞬言葉を失った。