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パンひとつ分の愛を【ONE PIECE】

第7章 トラ男とパン女の攻防戦




午前最後の授業は視聴覚室で行われ、筆記用具を手に教室へ戻ってきたムギは、ぱんぱんに詰めた机の引き出しを見て肩を落とした。

(あー……、追試の勉強しないと。)

来週に迫った追試はたぶん、ムギの進級に関して非常に重要なものだ。
結果しだいでは留年の可能性だって生まれるため、さすがのムギも危機感を覚えている。

「おい、ムギ。早く昼メシ行こうぜ。」

「あ、うん。ちょっと待って。」

「どうした、元気ねぇじゃん。」

教室に戻る道すがら、購買に寄ったボニーはすでに名物の焼きカレーピザパンを咥えている。
食欲ばかりで一見バカそうなボニーは、これでなかなか成績が良い。
本人曰く、テストのヤマがよく当たるそうだ。

ならばいっそのこと追試のヤマを張ってもらおうかと小狡いことを考えて見つめたら、彼女は「わかった!」と見当違いな回答を口にした。

「またトラなんとか先輩のことだろ! ついに降参して付き合ったのか?」

「違うって。ていうか、付き合わないから。」

「……ふーん。」

見事に回答を外したボニーはどことなく機嫌が悪そうで、いったいどうしたことかと首を傾げた。

「昼メシ、行こうぜ。」

「う、うん。」

ぷい、と歩き出すボニーの様子を不思議に思いながら、ムギは彼女のあとをついていく。
やってきた先は屋上で、冷えた風が吹きすさぶそこは、いつにもまして貸し切り状態だった。

「プリンのやつ、日直の仕事があって遅れるってよ。」

「そうなんだ。」

「ムギのとこにも連絡入ってるだろ。昼休みくらい、ちゃんとチェックしろよな。」

指摘されてケータイを確認すると、いつからか勝手に作られた三人だけのグループメールにプリンからメッセージが入っていた。
ムギはあまりケータイを見ないので、既読スルーはしなくても、連絡そのものに気がつかないことがしょっちゅうある。

無料のスタンプで返事をしたあと、ボニーと一緒にベンチへ腰掛けた。
冷たくなったベンチが肌に触れて辛い。
もしこの先も屋上で昼食をとるのなら、シートかクッションでも持ち込んだ方がいいかもしれない。

そんなふうに考えていた時、不意にボニーが口を開いた。



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