第7章 トラ男とパン女の攻防戦
最初に手を繋いだ時、キスをした時、ムギに明らかな拒絶があったのなら、ここまでの行動には出られなかっただろうとローは思う。
アブサロムに見せつけるためと称して過度な接触をしても、自分勝手な理由でキスをしても、ムギは嫌がらなかった。
恋愛に疎いムギとは違って、ローは男女の感情にそこまで鈍くはない。
彼女が恋愛感情を抱いているかどうかは別としても、触れても嫌悪されないポジションにローはいる。
少なくとも、アブサロムのように“つきまとわれている”とは思われていないようだ。
そうなれば、ローが取るべき行動はひとつだけ。
押して押して、押しまくる。
一番の懸念材料だった“ムギの好きな男”も誤解だと知ってしまっては、もはや遠慮する術を知らない。
ただ、ひとつだけ困ったことは、己の理性がいつまで保てるかの不安。
身体を密着させ、狭い口内に舌を押し込んで征服するキスは想像以上に心地良く、欲望が煽られて下半身が疼く。
「う…く……、ふぁ……ッ」
加えて、この声だ。
本人は抵抗しているつもりかもしれないが、キスの合間に漏れ出す声は嬌声と言っても過言ではなく、普段のムギとは掛け離れた色気にくらくらする。
どんな手を使っても自分のものにすると決めてはいるが、合意を得ずに彼女を暴くつもりはない。
ならばもう身体を離すべきだと理性が訴えかけてくるけれど、ムギの甘い舌が、声が、ローを誘って惑わせる。
今すぐにでも太腿をなぞって黄色いスカートの下に手を忍ばせ、秘めたる箇所を暴きたくてうずうずする。
押し倒しているのは間違いなく自分なのに、攻められているのはこちらだとすら感じる苦悶。
「ふ…ぅ……、ん、く……ッ」
キスに慣れないムギは、息継ぎの仕方すらよく知らない。
名残惜しさを感じながらもキスから解放してやり、代わりに赤みを帯びた首筋に舌を這わせた。
「ひぅ……ッ」
新しい刺激に敏感に反応したムギが声を上げ、引き剥がそうと頭を掴んでくる。
髪を思いっきり引っ張ればそれなりのダメージを負わせることができるのに、彼女はそれをしない。
そういう優しいところが、自分みたいな悪党に付け入る隙を与えてしまうのだ。