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パンひとつ分の愛を【ONE PIECE】

第7章 トラ男とパン女の攻防戦




ムギとローは、よくよく誤解を生む。
一番の原因はローの言葉が足りないせいだとムギは考えているが、ローの意見は違うらしい。

「待て、確認させろ。お前が好きな男ってのは、黒足屋じゃねェのか?」

「黒足屋って誰です?」

「あの金髪のパン職人……、名前はサンジと言ったか。」

「サンジさん? いや、好きじゃないですけど……。」

好きじゃないと言っては語弊があるけれど、ローの言う“好き”とは“恋している”という意味だろうから、そこはしっかり否定しておく。

「なら、あの時言っていたパン職人ってのは……。」

「だから、店長のことですって。優しいし頼れるし、仲間想いの格好いい人なんですよ。」

それに、パンもくれるし……という一言は、せっかくの褒め言葉が台無しになりそうだから心の中に留めておく。

「一応聞くが、お前、好きな男は……?」

「いませんけど……。」

恋愛的な意味で言うと、好きな人はいない。
そう答えたら、長く重たい息をついたローが、がっくりと項垂れた。

「お前……、ふざけんなよ……。紛らわしい発言が多すぎる。」

「えー。そんなの、そっちが勝手に勘違いしたんじゃないですか。」

わたしのせいじゃない……とばかりに責任を放棄したら、途端に凶悪さを増したローの瞳がこちらを見据え、「なるほど?」と低く問い掛けた。

「その理屈で言うと、今回の件は、付き合うフリとやらを勝手に勘違いしたお前が悪いわけだ。」

「え、それとこれとは別でしょ?」

「別なわけがあるか。よくも俺を散々振り回してくれたな。次はお前が俺に振り回させる番だ。」

「そんな順番、勝手に決めないでください!」

ムギにはローを振り回したつもりはないし、振り回されるつもりもない。

しかし、一番の障壁を乗り越えてしまったローにはいよいよ遠慮というものがなくなって、ソファーの背もたれに片腕を掛け、ずいと迫ってくる。

「いもしない男の影に遠慮してたなんて、俺らしくもねェ。悪いがここからは一切遠慮はしねェから、そのつもりでいろ。」

「な、なに言って……ッ」

こちらこそ悪いけれど、ローが遠慮をしているなんて感じたことは一度もない。
そんなローが遠慮を捨てたら、いったいどうなってしまうのか。

想像するだけで怖かった。



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