第5章 契約と思惑
「美味しそうじゃない」
「これ絶品なんだ。1本食べてからにしよ♪」
「じゃあ、私は先帰ります」
フェンの手を払い除けながら歩き出す。
「あ、ベビちゃん」
鬱陶しげにフェンを冷たく睨みつける。
「私、ベビちゃんじゃないので失礼します」
……
「戻ってきたぞ!」
「お前!」
「……?」
門の前から怒って駆けてくる兵士たちに、立ち止まる。
「お前、Aランク以下だろ!今何時だと思っているんだ」
「堂々と門限破りとはいい度胸だ」
「……え」
兵士に連れてこられた場所は、不機嫌な先生の前だった。
「はあ……今何時だと思ってんだ。めんどくせえなあ、、もうちっと上手くやれよ」
じとりと先生を見ていると、なんだと言いたげに視線が当たる。
「申し訳ありません」
「まずは……」
先生がめんどくさそうに口を開く。
「俺がOKと言うまで、授業中は一番前に立ってんのと、毎日の大浴場の掃除、あとは……俺の授業の後片付けだな」
「はい。わかりました」
「はいなら、行ってよし」
「誠に申し訳ありませんでした」
そう言いもう一度頭を下げ部屋を出ていく。
廊下を歩いていると、葵が近づいて来た。
私を探していたのか息が荒い。
「天月さん大丈夫?先生に何か言われたり……」
「……」
思わず苦笑いを浮かべる。
「それでウチになんの用なの」
「あ……フェンさんが……」
「……そう」
コンコンコンとラウンジのドアをノックすると、中からフェンの声が聞こえて一呼吸置いてからドアを開いた。
「それでフェンさん、何かご用ですか」
「レディを呼んできてくれるかい」
「…………っわかりました」
ラウンジを出てヴァイオレットを探す。
ヴァイオレットを見つけて戻るとまた別のお願いを要求される。それが朝から繰り返しでもう散々であった。
)本当に面倒くさい。もうそろそろフェンに殴りかかりそうだは)
魔法の道具を持ってこい。上着を片付けろ。ステッキを持っていてほしい。
要求は様々だったがこれだけは言える。
(それぐらい自分でやれよ!先生からの罰もあるんだぞ。最近大浴場の掃除が時間かかりすぎて、終わるのは朝の5時なんだぞ!)
「……はあ」
「ん?どうしたの?天月ちゃん」
「いいえ、なんでもありません」
そう言いながら無理やり口の端を上げた。