第13章 GW合宿
慌てて声を掛けるけれど、彼にはもう聞こえていないようだ。
ウォーーっという声を上げてドンドンと遠ざかって行く。
見失ってしまう前に、早く行かなくては。
『っ大変。スガ先輩、私、日向くん追いかけて来ますっ。』
「え!?ちゃんが?」
『行ってきますね!』
「あ、ちょ!」
すぐ近くにいたスガ先輩に、持っていたタイマーを預けて、日向くんが行った方向へと走って行く。
坂道を登りきった先にある市街地の方まで気付かずに走っていってしまったみたいだ。足の早い日向くんと私じゃ全然速度が違くて、私が後を追って市街地に着いた頃にはもう追いかけていた筈の背中もすっかり見えなくなってしまった。
あの様子だと、あまり曲がったりだとか複雑な動きはしていないと思うのだけど、とキョロキョロ辺りを見渡してみる。
『どこ行っちゃったんだろう。』
そういえば、何も考えずに追いかけてきてしまったけれど、ここら辺の土地勘が無い私が追いかけてきてしまって、例え日向くんを見つけたとしてちゃんと元の場所に戻れるだろうか?
というより、日向くんを見つけられるかも不安になってきてしまった。真っ直ぐ進んで、逸れる道がある度に覗いてみるけれど、なかなか見つからない。
もしかして、これは私も迷子になってしまったんじゃ。
背中にスっと冷たいものが走る感覚。
でも考えていても仕方が無い。もう少し進んでみようと、次の曲がり角を覗いた時だった。
見覚えのある、綺麗なオレンジ色の髪。
『日向くんっ!』
「あ!さん!!」
良かった、見つけられた。
ニカッと音がなりそうな顔で笑っているのを見てほーっと安堵の息が漏れる。
『良かったー見つかって。』
「···ぇ··?」
『·····え?』
と、日向くんの後ろから聞こえた私を呼ぶ聞き慣れた声。
目を移すと、そこにあったのは数ヶ月前まで毎日見ていた赤いジャージ。見間違える筈ない、私が染めたその綺麗な金色の髪。
私の心臓がドクドクと煩く鳴るのがわかる。
『····けんま?』
だって、会いたい会いたいとずっと思っていた私の幼なじみが、そこにはいたのだから。