第13章 GW合宿
すっと立ち上がった研磨の胸に向かって走って飛びつく。
周りの音なんて、耳を塞いだみたいに聞こえなかった。
『っけんま!』
ぎゅっと抱きしめられた研磨の腕の中。
研磨の服から香るいつもの洗剤の匂い、頭を優しく撫でる手。
「?」
その腕の中の相変わらずの心地良さに何だか泣きそうになって、堪える為にぎゅーっと研磨の胸に顔を押し付けた。
『うーー。』
「···、ちゃんとよく顔、見せてよ。」
研磨はグリグリと胸に押し付けていた私の頬を包み込むようにして上に向ける。
しっかりと研磨と目が合った。私の好きな猫みたいな、綺麗な研磨の目。
「元気そうで、良かった。」
コツンと優しくぶつかった額と額。香る研磨のシャンプーの匂い。
落ちてきた柔らかい金色の髪が私の顔をサラリと撫でる。
フワリと優しく微笑んだ研磨の顔に、私の心臓の辺りがぎゅっと痛くなる。
『研磨も、元気そうで良かった。』
「ねぇねぇ!研磨とさんは知り合いなの!?」
突然私の真後ろから聞こえた日向くんの声。
すっかり、日向くんの存在を忘れていた。私は日向くんを探していたにも関わらずだ。
その事実と、研磨に人前で甘えてしまった恥ずかしさで一気に顔に熱が集まる。慌てて研磨から離れると、何となく研磨が寂しそうな顔をしたような気がした。
『研磨が、前に話してた東京にいた時の幼なじみなの。』
「が生まれた時から、ずっと一緒。」
「そうだったのかー!!」
そういえば、と冷静になってきた頭で考える。
何でここに研磨がいるんだろう。しかも1人で。
『そういえば、研磨。なんでこんなところに1人でいるの?クロちゃんは?音駒の皆は?』
「あ、えーっと、····迷子?」
『迷子っ?研磨が?またゲームしながら歩いたの?』
「····うん。」
『もー、歩きながらゲームしちゃダメだよっていつも言ってるのにー。クロちゃんからも、心配だってメッセージ来てたのに。』
クロちゃんから来ていたメッセージを思い出す。まさか本当に研磨が迷子になってしまうとは。
『クロちゃんに連絡した?』
「うん、した。」
『もー。』
研磨の頬を指でぷすぷすと指す。
されるがままの研磨の頬のぷにぷにした感触を楽しんでいた時だった。
「研磨!」