第1章 *紅い月の下で。【高桂】
「…相変わらず、耳弱ェんだな」
「…ッ、は、なせ馬鹿…」
乱れた着物から見える白い鎖骨、白い脚、色香を放つ漆黒の髪、上気した頬、涙で潤った、こちらを睨みつける眼。
全てが、自分を誘っているように思えた。
「小太郎…」
形の良い小さな唇に口づける。
強引に唇を割り、歯列をなぞり、舌を絡ませ、きつく吸い上げる。
「ふ…ッ、ンむ…」
深く、深く口づけていく。
まるで、全てを喰らい尽くすように。
「ッはぁ……」
口内を味わい尽くし、唇を離すと、銀色の糸が二人を紡いだ。
「た、かすぎ…貴様、何の為に…こんなこと…」
「あ?何の為に、だと?…だから、言ったじゃねェか」
”お前が欲しい"
高杉は首元に顔を埋めると、白い鎖骨に噛み付いた。
「ィ…ッ、痛…いッ」
びくりと身体が跳ね、痛みが桂の顔を歪ませる。
そんな桂を愉しそうな顔で見上げる。
「ククッ…綺麗だ……その顔も、この印も……」
跡をつけた場所を愛おしそうに撫でると、また、紅い華を咲かせていく。
「あ…ッ、やッ、いや、だ…ッ」
桂の頬を、一筋の涙が伝いおちた。
ひとしきり跡をつけ終わると、その場所を舐めていく。
肌の上を舌が這いずりまわる感触に、ゾクゾクと背筋に嫌なモノが走る。