第11章 1月 初詣
1月1日
待ち合わせの神社に行くと光くんはもう来ていて、人も多かった。
「おまたせ。」
「人多いっすわ。」
いつの間にかウチらのなかで人混みでは手を繋ぐのが当たり前になっていて、差し出された光くんの手を自然に握って階段を上がっていく。
階段を登りきるとそこに広がったのは初詣に来た人の長蛇の列。
「先輩、やっぱ帰りますか。」
その長さは光くんが思わずきびすをかえすほどだ。
「せっかく来たんやから並ぼ?」
「ホンマっすか・・・。」
先はまだまだあると先頭の方に視線を移していくと見覚えのある頭が見えた。
列の中で一人だけ明らかに頭一つ分出ていてすぐに千歳くんだと分かった。
「今お参りしてるの千歳くんやない?」
「あ~タッパあるからすぐ分かりました。」
お参りを終えてこっちに歩いてくる。その後ろを赤いなにかがひょこひょこと付いてきている。
「あ!!真希やん。」
赤いなにかは金ちゃんだったらしい・・。
千歳くんもこっちに気が付いたみたいだったけど手を振っただけだった。金ちゃんが走ってこようとしていたが千歳くんに首根っこを掴まれて人混みに消えていった。
「あらぁ?真希ちゃんと光じゃない。」
「小春~先行かんといて・・・。」
後ろからまたまた聞き覚えのある二つの声。振り向くと小春ちゃんとユウジくん。
「偶然やね、二人も初詣?」
「おん、それにしてもようこんな列に並んだな自分ら・・。」
「二人は並ばなかったの?」
「今日は気分だけや。明日なら並ばんくてもお参り出来るやろ。」
((なるほど))
「ほなユウくん、行こか。お邪魔しちゃってごめんなぁ~。」
「せやから小春、先行くなって。」
先に行く小春ちゃんを追ってユウジくんも人混みに消えていった。
「みんな意外に来とるんやな。」
「せやな・・。」
それから30分やっとウチらの番が回ってきて、無事に今年のお参りを済ませることができた。
「光くん何お願いしたん?」
光くんはいつものようにイタズラっぽく笑った。
「秘密っすわ。真希先輩こそ、何お願いしたんすか?」
「ほんならウチも秘密や。」
きっと光くんと似たような願いだろう。
ウチの願いは・・・
(全国で四天宝寺が優勝できますように。)