第8章 10月 初デート
次の日まさかの寝坊。
「大変や・・・。」
今は9時45分、待ち合わせは駅に10時、駅まで走って5分。
昨夜のうちに服を選んでおいて正解だった。
(いける!!)
と思ったら大間違い。
自分が運動出来ないことを忘れている。
駅に着いたのは、10時5分。走って来たウチを見て財前くんが目を丸くする。
「先輩が遅れるなんて珍しいっすね。」
「ご・・・・ごめ・・・」
「そんなに急いでこんでも良かったのに。」
息絶え絶えなウチを見て財前くんが少し笑って背中をさすってくれた。
「落ち着きました?」
「おん、ごめんな遅れて。」
「別に大丈夫すわ。それにしても寝坊やなんて、今日が楽しみで寝れんかったとか?」
「・・・なんでわかるん。」
「俺がそうやったからですわ。安心しました、俺だけやないみたいで。」
思考が追い付かない。財前くん何て言った?今日が楽しみで眠れない?俺もそうだったから?
デレてる。
財前くんがデレてる。
「映画観るんでしょう。早く行きません?」
あまりにウチがキョトンとした顔で見ていたようで財前くんが目線を外して歩き始めた。
「映画何観たいんすか?」
「これなんやけど。」
映画の宣伝パネルを指さした。
「ラブロマンスっすか。」
「好きな本が映画になってん。」
あと10分で始まるみたいだったので早めに入ることにした。
少し話をしていると映画が始まった。
映画が終わり、少し遅めの昼食を取ることになった。近くのファミレスに入り、買ったパンフレットを広げた。
「面白かった~。ごめんな、合わせてもらって。」
「いや、良かったすわ映画。思っとったより複雑なんですね。」
「そうなんよ。原作知らんかったらウチの頭じゃ分からんかったかも。」
「大体分かったんすけど、一ヶ所だけ分からんとこがあって、先輩今度原作貸してくれませんか?」
「ええよ~。今度持ってくるな。」
財前くんがウチの好きな本に興味を持ってくれたことが嬉しかった。
そのあと昼食を済ませて近くを回っていると日が沈み始めたので帰ることにした。
「財前くんまた明日な。」
「真希先輩また明日。」
家の前で別れてそれぞれの家に帰った。
((てか、よく考えたら今日初デートやったんや。))