第6章 7月 大会
「届けぇー!!!」
向こうベンチで桃城くんが叫んだ。その願いが届いたのか、銀さんはそのボールを受けてラケットを落とした。
銀さんがラケットを拾おうとするが顔を歪め動きを止めてしまった。隣に座っていた監督がスッと立ち上がって前に出た。
「ムリや銀。折れとるで・・・。」
「四天宝寺中、石田選手の棄権により、勝者青春学園、河村選手。」
「銀さん!!はよ病院いかな。」
「俺は銀を病院に連れてく。次の試合やけど謙也、千歳と変われ。」
いきなりの選手交替に焦りを隠せない二人。
「オサムちゃ・・」
「ええな。小村はどうする?」
「ウチは・・・」
「真希はん。試合を見届けてくれないか。」
どうしようかと迷っていると銀さんが先に試合の方に残れと言った。病院に付いていきたかったが、銀さんの真剣な目を見て試合に残ることに決めた。
「わかった。監督、ウチは試合を見届けます。」
そして次の試合。
謙也くんが千歳くんと変わり青学、手塚・乾ペアと四天宝寺、千歳・財前ペアとなった。
いざ試合が始まると手塚くんと千歳くんの打ち合いになり財前くんと乾くんは入る隙もない。
「これは俺たちの入れる領域ではない。」
乾くんがそう呟き二人はほぼ隣で見ている状況になった。
「これじゃシングルスやないの・・。」
「ゲームアンドマッチ!!青学、手塚・乾ペア6-1。」
「はぁー。降参ばい」
握手を交わし青学の勝ちは決まったが金ちゃんが越前くんとどうしても試合がしたいというので1球勝負をすることになった。
金ちゃんの技スーパーウルトラグレートデリシャス大車輪山嵐が決まりボールが真っ二つになり試合は幕を閉じた。
「こしまえ~、めっちゃ楽しかったわ。今度はちゃんと試合しよな。」
「今度は負かしてやる。」
四天宝寺は準決勝で青学に敗れた。でも不思議と涙は出なかった。
コートをあとにするみんなに掛ける言葉は一つ。
「みんな!!いい試合やったな!!」