第5章 7月 息抜きとテスト
「とりあえず,人通りが少ない所に移動しましょ。」
財前くんが歩き出したので,追いかけようとしたが人の波に揉まれてなかなか前に進めない。そんなウチを見かねてか財前くんが呆れた顔で手を差し出した。
「またはぐれたら困るんで・・・。」
「あ・・・ありがとう。」
財前くんの手を握ろうと自分の手を差し出したが途中でピタリと止まってしまった。
さっき助けてもらってから,なんか変や。すごくドキドキして素直に財前くんの手を掴めない。ウチがまごついていると,中途半端に出したままの手が優しく包まれて,歩き出した。
人混みを抜けると、神社らしいところの前に着いた。人はウチらも合わせて数人しか居らず静かだった。財前くんは手を離してゆっくりとウチに向かい合った。
「・・・迷惑かけてごめんな。」
「ホンマっすわ。先輩のくせに迷子なるし、ドジやし・・・・ほっとけないっすわ。」
「う・・!今日のはホンマにごめんなさい。」
「てゆうか先輩、浴衣崩れてます。」
「え!?・・・さっき引っ張られたからやろか?あれ、どうなっとんの。」
「・・・ホンマにほっとけないっすわ。貸してください。」
財前くんはふぅ・・と一つため息を付くと,襟のあわせをとってあっというまに着崩れを直してくれた。
財前くんは携帯をだしてみんなにメールをしているみたい。
「上で座って待ちましょか。」
二人で境内に座って10分くらい話しているといると、金ちゃんが先に階段を上がってきて、ほかのみんなも上がってきた。
「もう!!真希ちゃん心配したわよ~。」
「小春ちゃん・・・みんなもごめんなさい。」
「ホンマ無事でよかったわ。」
「財前が見つけてくれてよかったなあ。」
ヒュ~~
ドーーーン!!
みんなに謝っているとちょうど鳥居の向こう側に花火が上がった。
「わあ!!花火、・・・きれい。」
「無事やったし,まあええか。」
「てか,ここ穴場やん。」
そのまま神社の境内からみんなで花火を見た。
ウチが迷子になって迷惑を掛けちゃったけど、四天宝寺に来て初めての夏祭り。
(みんなとも仲良くなれたし,思い出になったな。)
帰りはみんなに送ってもらって家に帰った。
今日はよく眠れそう。
「それにしても,財前くんといたときのドキドキはなんだったんやろ。」