第5章 7月 息抜きとテスト
「先輩ら置いていきますよ。」
「そないにウチらと行きたかったん?かわええな光ぅ。」
ウチらが話している間にみんなが揃ったようで移動を開始していた。なかなか動こうとしないウチらに気づいた財前くんが声を掛けてくれたようだ。
「財前くん。浴衣似合てるね。」
「先輩ほどやないですわ。」
「お前らこそ置いてくぞ。」
忍足くんに促され,みんなで歩き始めた。
会場に着くとたくさんの人で溢れかえっていて花火の時間までみんなで出店をみて回ることにした。
「うまそうなもんがぎょーさんあるわ。」
金ちゃんはあっちにもこっちにもある食べ物の出店に目をキラキラさせている。今にも走り出しそうな金ちゃんを千歳くんが捕まえている。
一段と人が増えそろそろ移動をしようというとき・・・
「真希ちゃん。あっちのほうにも行って見ましょうって,あら?」
「小春~いくで。」
「ユウくん大変!!真希ちゃんがおらへんわ。」
「「なんやてー!!」」
「まあ、真希ちゃんも子どもやないねんから大丈夫やろ・・・。」
「はぐれてもうた・・・。」
いつのまにか周りには知らない人ばかり。ぐるりと周りを見渡してみるがテニス部らしき姿は見当たらない。
人が少ないところに移動しようと思ったが、右も左もわからない状況なのでどうしようもない。
「カーノジョ。一人なん?俺らと遊ばへん?」
周りをキョロキョロしていると前から男の人が2人ウチの目の前で止まった。
「え、あの~」
「あっちのほうに行こか。」
返事に戸惑っていると腕を捕まれて、人混みを掻き分けて進み始めた。
「あの、人とはぐれただけなん。」
「ほんなら俺らも探したるから。」
ほとんど引きずられるようにして前に進んでいたところを急に反対の腕を誰かに捕まれた。
「あんたら人のもんに何しとんねん。」
知らない男の手が離れ反対側に引っ張られて誰かの腕の中におさまった。
「なんや男おったんか。人を探してるゆうとったから手伝っとっただけや。いくぞ」
そっと後ろを振り返ると怖い顔をした財前くんと目があった。
「財前くん・・ありがとう。」
「あんた何やっとるんですか!!急にいなくなって、みんな心配しとんねん。」
「ごめんなさい・・・。」