第4章 瞬間記憶力【過去編】
雨の中彼を抱きしめているとさすがに異変に気付いた先生達が慌てて駆け寄ってきて早く中にと促してきて、今度は微動だにしなかった悠も動き始めて部屋の中へと一緒に戻り、すぐさまバスタオルで濡れた頭や身体を拭いて先生が用意してくれた体操服に着替え、その間静かにしていた悠へと声をかけようとした時勢いよくドアが開かれ涙を流す蘭が駆け寄ってくるのを目で追った。
「悠ッ!!」
『……蘭……』
「しん…ぱ…した、んだよ…っ…!どこにも…いな、くて…ッ!!」
『……うん……ごめん……』
先ほど俺がしたように悠の体を思いっきり抱きしめる蘭の声は震えていて、本当に心配していたんだという事が伝わってくる。そんなぐすぐすと泣きながら言葉を発する蘭に悠は小さな体を抱きしめ返してただ何度も謝り続けていた。
『……新一も……心配…かけてごめん…………それから……探しに来てくれて…ありがとう…』
「本当、めちゃくちゃ心配したんだからな。…俺はどんなことがあっても悠の味方だ!他のやつが何て言おうと悠は悠だから。この先も何も変わりはしない」
『…っ………う、ん……俺…達、し…んゆ…?』
「おうッ!あったりまえだろ!お前がたとえ嫌がっても俺は親友だって思ってるからな!」
『…嫌…じゃ、ない…っ……へへッ、新一と…親友……』
「私も!親友だよッ!!悠は大事な人だもん!!」
「や、お前は親友とか以前に兄妹だし…」
少しずつ落ち着きを取り戻してきたのか先ほどまでの何も感じていないような冷たい空気は既に消えていて、心配しまくる蘭にタジタジになりつつもどこか嬉しげにする様子にホッと胸を撫でおろして二人の会話に加わったことにより俺と蘭のどちらが一番の親友かという言い合いに発展。