第2章 幼馴染
「あのな、何回も言ってるが蘭とはただの幼馴染だ。それ以上でもそれ以下でもねえ」
『ふーん…。まあ百歩譲ってそうだとして、なら他に居るのか?好きな奴』
よくもまあ兄の前で妹をただの、なんて言ってくれたものだと思いながらそこまで否定するのなら別に本命がいるのではと問いかけると何故かこっちをじっと見つめてくる新一にドキリと胸が高鳴ってしまう。…いやいや、男相手にドキッってなんだ!
「……本当に知りたいのか?」
『……っ…い、いや…別に…いい……(さっきからすげえ心臓が煩いッ)』
知りたいと言えばなんて答えが返ってきたのかは今となっては分からないが、あまりに真剣に見つめてくるものだから男が相手だと分かっていても顔に熱が集まってしまい、堪らず顔を伏せてしまったせいで俺は気付きもしなかった…新一もまた頬が赤く染まっていることに。
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何だか妙な空気になってしまったがお互いにこれ以上この話題には触れないでおこうと心の中で決め、昼休みの時間もそろそろ終わりなので弁当を片付けて屋上を後にする。
『…(午後の授業って何でこう眠いんだ)…』
教師が黒板に文字をチョークで書いていくのを自身のノートに書き写していくも、昼食後ということもあってか午前中に眠ったはずなのに再び睡魔が襲ってきてしまいウトウトしそうな頭をなんとか持ちこたえて午後の授業を乗り切り、帰りのホームルームで担任から最近通り魔が出没しているとのことで帰る時は必ず人通りのある道を通って帰るようにとの注意を受けてそれぞれ部活へ行く者、帰宅する者と別れるなか自分も今日は運動部からの要請もないので帰宅することにする。
『(帰りにスーパー寄って行くかな。たしか今日特売日だったはずだし…)』
学校を後にしてから今朝の弁当でほぼ食材を使い切ったことを思い出して近くのスーパーへと足を向け、何とか特売の時間に間に合ったことに安堵して必要な食材を購入。
「色々見てたら遅くなっちまった…。早く帰って支度しねーと…(そうだ、こっちから行けば近道になる!)」
思いのほか時間がかかってしまいスーパーを出た時には街灯がともっていて、早く帰って夕食の準備をしなければとホームルームで担任が注意していたこともすっかり忘れており近道するかと人気の少ない道へと足を進めてしまった。