第3章 むかし
「んー…」
目を覚まし、妙な圧迫感に気がついた。
目の前には薄い胸板、不気味な刺青。
無意識に、その刺青を指でなぞっていた。
ふと、顔を上げて目の前にいる男を評価してみる。
無造作にはねている黒髪、髭、唇…意外にも整った顔をしていて、思わず凝視してしまった。
「…寝込みを襲うのか?」
「っ‼!?」
突然頭上から降ってきた少し掠れた声。
驚いて、反射的に密着していた体を離す。
男がひとつ、欠伸をする。
そして、ニヤ…と笑った。
「で?襲うのか?」
「ばっバカじゃないの‼?だれがあんたみたいな…‼」
「そうだな。おれは襲われるより襲う派だ。」
「ぐぅぅ…知らないわよっ…‼
自分の趣味を公開してきた男を思いっきり睨みつける。
「怒るな。今何時だ?」
「…午前8時を少し過ぎた。」
「じゃあ、そろそろ出るか。仲間探すの手伝え。」
手伝え、と命令口調で言われた。
条件として、あたしの仲間を探すのも手伝わさせる。
9時前には宿を出て街へ繰り出した。