第3章 むかし
呼吸が整ったのを確認し、強く抱きしめた。
「っなに!?」
「…わからねェ。」
「はぁ?」
本当に、自分でもわからない。
何故ここまでこの女を求め、この女に執着するのかが…。
"抱きたい"というよりは、
"おれだけのモノにしたい"という感情。
こんな姿、クルーがみたら"らしくない"と笑うだろう。
「…寝ない?」
「あ、あァ…」
「おやすみ。」
「おやすみ。」
そう言うと早くも寝息を立て始めた。
腕の中に収まる小さな体、あんなことされたにも関わらずしっかりと背中に小さな手が回されている。
今日が終わればもう、こいつとは戦うことしかないだろう。
「…」
初めて呼んだ名前。
だが、届くことはない。
こんなおれの思いも。
「クソ…っ、らしくねェ。」
おれの呟きは虚しく暗闇に溶けていく。