第3章 むかし
この時はまだ髪が長かったこいつ。
おれの上に乗ったため髪が鎖骨を撫で、くすぐったい。
そんなのも気にせず上で震えている。まるで小動物だ。
そんなこいつを見て"可愛い"とさえ感じてしまう。
吊り橋効果を知ってるか?
正式には吊り橋理論。カナダの心理学者によって発表された実験結果だ。
人間は生理的興奮、例えば揺れる吊り橋、さっきの雷でもあるように日常生活ではあり得ないようなことで起こる心拍上昇時に異性と話したりする事で自分が恋をしていると思い込んでしまう現象だ。
さっきの雷で心拍数が上がったうえにこいつの行動。
そして、思わず抱きとめてしまったが、こいつの今の格好…
下着にタオル一枚だけ…。
男をその気にさせるには十分すぎる。
「はぁ…ありがとう。ごめんね。」
謝りながらベッドを降りようとする女の腕を掴みベッドに押し倒す。
「わっ‼ちょっと…トラファルガー‼?」
「そんな格好で男の前に出てくるな…」
「えっ、あ、だって…雷がっ…」
「うるせェ…」
顎を左手で持ち上げ目線を合わせる。
完全にこいつの目は動揺している。
加虐心。
そんなものが湧き上がる。