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緑間のバスケ【黒子のバスケ】

第21章 色気の欠片もないのだよ






『あれ?高尾は?』


「腹が痛くて動けないと言っていたのだよ」



旅館の入口で待っていると、花子が小走りでやってきた。


もちろん、高尾が腹を壊したのは真っ赤な嘘。あまり嘘に自信はなかったが、花子はそれを信じたようだ。



『バカだね、高尾。夕飯バカみたいにカレー食べるから。まっ、2人で海行っちゃおっか!』



花子は海に行けるのが余程嬉しいのか、ニコニコ笑いながらまるで子供のようにはしゃいでいた。




『うーみーだーーーーー!』


「うるさいのだよ。周りの迷惑だ。」



旅館から歩いて5分。
目の前に広がる大きな海に興奮した花子は大きな声で叫ぶ。



『砂浜行こう!』



オレの手を引っ張って階段を降り、海辺を歩く。波がオレたちの足元を行ったり来たりするところでしばらく遊んでいた。


海最高!なんて笑う花子は月夜に照らされ、いつもよりも何倍も綺麗に見えた。


子供のように波を追いかける花子を横目に、防波堤に座りしばらくすると、海を堪能した花子がちょこんとオレの左側に座った。



『あー楽しかった。』


「あぁそうだな。」


『また明日も練習だと思うと辛いね。』


「あぁそうだな。」


『でも、合宿楽しいね。』


「あぁそうだな。」


『ねぇ!話聞いてる?』



気のない返事をしていたオレに、頬を膨らませちょっと怒った素振りを見せる花子。


・・・聞ける訳がない。
この後の告白のことでオレの頭はいっぱいいっぱい。そんな話を聞く余裕なんて皆無なのだ。


花子は不安そうにひょっこりとオレの顔をのぞき込む。


・・・近い。
唇までわずか数センチ。触れてしまえ、いやダメだ。心の中で天使の真太郎と悪魔の真太郎が囁き合う。




『顔赤いよ?熱あるんじゃない?』



オマエのこと考えて赤くなっているのだよ、とも言えず黙り込むと、花子はオレのおでこに手を添えた。

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