第20章 持つべきものは高尾
「15分のインターバル挟んで、ゲームだ。準備しろ。」
大坪さんの声掛けに一同が返事をする。誠凛が同じ宿にいることが分かり、予定を変更して合同練習を行うことになった。
みっちり練習をして、最後に試合。海に行く気力もなくなるくらいにハードな1日だった。
そして花子の方に目を向けると、コートをモップ掛けしたり、試合に向けてせっせと準備をしていた。
「オイ、」
『ん?』
「飲め。」
ちょっと前に花子から手渡されていたドリンクボトルを花子に差し出す。
『それ、真ちゃんのだよ?』
「良いから飲むのだよっ!」
少し語気を強めて、そして少し強引にそれを彼女の胸に押し込めば、堪忍したのかありがとうと笑いながら1口、そして更に1口スポーツドリンクを飲んだ。
その後準備のために花子は再び慌ただしくマネージャー業をこなす。
「素直じゃねぇな、真ちゃんは。」
「う、うるさいのだよ。」
「あの調子じゃ山田、気付いてねぇぞ。オマエが心配してるって」
実際高尾の言う通り、きっと花子はオレの気持ちなんて1ミリも気付いていない。でも別にそれで構わない。
「あいつがぶっ倒れなきゃ、それでいい。」
オレの思いは誰に伝わるでもなく、広い体育館の中に消えていった。
結局火神抜きでやった試合はオレたち秀徳が勝った。
再び花子の様子が気になり視線をずらすと、鉄心こと木吉鉄平と何やら楽しそうに話をしているところだった。
彼の大きな手が花子の頭の上に乗ったとき、そしてニコニコと楽しそうにしている花子の顔を見たとき、胸がチクリと痛んだ。
「高尾、シュート付き合え。」
「げっ!ってかオレに当たんなよっ!」
「うるさいのだよ。早くしろっ!」